2008初島ダブルハンドレース(73卒辰巳豊)

今年は完走!ダブルハンドレース
 もういいや、来年は出ないぞ!堅く心に決めていたはず。しかし、何故か長い冬が終わり、重い風が和らぐ頃になると落ち着かなくなる。そうあのプチ冒険レースを年に一度夢みるのだ。
 訳もわからず出た一回目、たった二人で初島を回ることが果たして可能なんだろうか?合方はベテランの均さん。往きは微風のち順風、帰りは一発スピンラン。思えば楽な展開だった。船もおろしたて、GPSが使えずゴールラインの横を突っ切っていった。そのままでは陸地へ乗り上げるので、コミッティーへ電話。ゴールが解らないと告げるとGPS上の緯度経度の数値を教えてくれる。GPSは使えませんと言うと、さっきゴールの横を通り過ぎって行きましたよとのこと。気を取り直し、再ゴール。初完走。当時、視界は濃霧のため1マイル。バッテリーが弱っていてエンジンは何とかかかったけどGPSはダウン。こわごわ闇夜の海を壺へ向かう。城ヶ島の灯台を行きすぎそうになって大あわて。何とか入港。
 翌年、またしてもチャレンジ。今度は若手の有能セーラー大沢ジュニア。さすがにセーリングセンスは冴え、一緒に乗せてもらっている感じ。この時は、いいポジションで前半を終えるが帰路が雨、雨、雨、ゴール付近はさっと晴れ渡る。日没寸前のゴールにはあらぬ方向から続々艇団が。置いてきたはずの後続艇が全部先に入っている。遅い船に有利な稀な展開。
 このあと二年間は出場しなかったが、ブルーリボンは若手OBが出場。たしかいずれもリタイアしている。昨年は職人、石森とのコンビ。前線のいたずらで荒れたレースだった。あと一歩というところで骨折した左足首がいうことをきかず夜の海に落水でもしたらと棄権。今思えば、中で寝ていて石森に任せればよかったかも。この時に完走していれば初入賞だった。
 そしていよいよリベンジの時がきた。仲間を説得して、高価な機械オートヘルムを入手。万全を期す。ただし、使うべきタイミングを逃し、使ったのは行きの早朝回航のみ。しかし、この働き者はきっと今後色々な場面で活躍してくれるだろう。前日は職場を早退し、17時前には壺入り。食事、買い出しはトレーニングを兼ねて自転車でゴー。帰りに道を間違えてうろうろ。ここで骨折でもしたら笑い物になると思い急坂を降りる時は自転車を押す。興奮して眠れぬが、ジンを煽って9時には消灯。夜中の1時にトイレに行きたくて起きてしまう。しまったいつもの生活習慣だ。その後眠れずうとうと、3時過ぎには起きてしまい、4時半の目覚ましは意味がなく出航準備。花丸が出て行くのをみて出航。大網の位置を確認するもGPSへのマークの仕方がわからずあたふた。昔の航跡を全部消去してしまう。これが後のトラブルの元になるとは。どうも近代機器には弱い。その後オートヘルム大活躍。6時前には逗子に到着。
 何と二番乗りだ。ゴールの網が恐いのであたりを偵察。余裕でスタートと思いきや81杯のスタートは混乱。しかも直前で無風に、なんとかスタートを切る。3分遅れだか、それでもいい方。序盤は無風の神経戦。いい位置にはいるのだが、何しろ前に進まない。一時間、二時間、時だけが過ぎていく。江ノ島がいつまでも横にある。睡眠不足も手伝ってうとうとする始末。集中力が続かない。とうとう艇速が1ノットを切る。相変わらず艇団の中でいい位置にいる。前から数えて1/3といったところか。後ろに50杯も従えていると気分は悪くない。シャークがなかなか追いつけず、かえって離したりもする。話声が聞こえるところまで近づいてきた。そのうちスルスルと上に出られる。ヘルムは船具屋さんの中村さん。早いねなんて声をかけようと思ったら真剣そのもの。これでは黙っているしかない。明くる日のパーティーで聞いたら、リボンがどうしても抜けず焦りまくっていたそうな。
 シャークにあっさり抜かれて戦意喪失。たまらず交代で一眠りすることとする。先に石森に寝てもらい、30分程で交代。ヒールせずに寝やすいが中は暑い。うとうとする間に夢をみたりした。何だかいやな気分で起きる。外は相変わらずの微風。ステーにもたれかかりションベンをすると、動いているのは確認できる。目の前を何かが横切る。大きな三角背びれ!サメだあ!かなり大きい。ぐるぐる威嚇するように船の周りを巡る。ここで居眠りでもして落水したら、食いちぎられそう。用心、用心。サメは初島手前でもみたので、もしかしたら追いかけてきたのか。その時も小便をしたら現れたので、臭いを覚えられたか。
 そうこうしているうちに少し動き出してきた。ここが勝敗の分かれ目と気合いをいれる。艇団は早く南風を掴もうと狙う沖だし組。岸へ寄せて湾岸流に乗ろうといる岸組に大きく別れる。我々の判断は中庸を行く、どっちつかず組。これも少数だがいる。やがて岸組がすうっと前へ。しまったやはり思い切って寄せるべきだったか。沖は遅れていたが、ほどなく吹き始めた南風を早く拾いこれまたベルトコンベアに乗っているように前へ。簡単に言えば真ん中は取り残された。ここでの差が順位を決定づけた。あとは順風で初島へ。近づくと回航してきた船が来るわ来るわ。完全に後方艇団に落ちてしまう。一緒に走っていた連中の中では、さほどの差はないのだがグループごとに大きくワープした感じ。回った船は不思議とジブのまま。帰りも上りか。不思議な風だ。そのうち後続になるほどスピンを揚げるようになった。ただし苦しそう。
 初島をぎりぎりで周り、少し前と詰めた。アビームとみたブルーリボンは三色旗ジェネカーを揚げる。これは頑張って一番できれいにアップ。ぐんとスピードが増す。しかし最近は長いポールを持ち巨大なエリアのジェネカーが多く、じりじりと詰められ、やがて抜かれてしまう。1時間ほど走ると三浦が見えてきた。55度一本コース。ここは本来オートヘルムの出番であった。波がなく順風ならばはるかにヘルムは上手。二人でトリムに専念すべきであった。また途中から風が後ろに回った。ここでスピンに交換したかったが、時間内にフィニッシュできるか?暗くなったらフィニッシュラインが見えるかといった不安で頭の中が一杯。リポビタンDを飲むが、それぐらいでは前半から溜まった疲れはとれず疲労は極限状態。オートヘルムに任せセールチェンジをするという頭が働かなかった。それでも逗子までの間に抜かれたのは3杯。あまりかわらなかったかもしれない。
 なかなか大磯のラインまで来なかったが、そこを過ぎれば早いもの。江ノ島がもうそこだ。大磯を見る度に目賀田の事を思い出す。きっと一番ダブルハンドに乗りたかっただろうに。目の前に障害物、大きなブイだ。レース用に打ってあるのか。ゴールは近いな。しかし、無情にも日は暮れていく。航海灯を点ける。街の灯りが騒がしい。どこが逗子なのか。最初の年の二の舞はもうご免。GPSで位置を確認する。赤い灯が二つ見えて迷うが右が回転してるのでゴールだろう。左に一杯、右から一杯、すぐ後ろに一杯。緊迫のゴールだ。ぶつかりそうに近く感じるが、そのままの順位を保ってゴール。セールナンバーを照らし、ブルーリボンと大きな声をあげる。すぐにジェネカーダウン。簡単な筈が、一度巻き取ったセールが開いてしまい、海中に。すぐに拾い上げる。こんな時に限って吹いてくる。
 ゴールしてからが本当の冒険レースだ。慎重にシートが垂れていないか確認しエンジンをかける。無事に回る。江ノ島、鎌倉、逗子は煌々としていて夜空というものすらない。街全体がライトアップされている。三浦半島は逗子より南は暗黒世界。まだ佐島あたりまではぽつぽつ灯が見えるが、その先は真の闇だ。地の果て、海の果てへ進む気持ちだ。コロンブスはさぞかし恐ろしかっただろうに。夜に乗り慣れていないので、灯りが判別できない。やけに明るいのが近くに見える。近いので裕次郎灯台か、でも行けども行けども位置が変わらない。異次元空間に吸い込まれたか。直ぐ右に大きなヨットの航海灯が見える。それにしても巨大だ。しかし5分後には影も形もない。恐怖心からあらぬ物を見てしまったのか。亀城の灯質は何か?二人とも意見が違う。チャートで確かめる。亀城は視認。少しほっとする。GPSを覗いて確実な赤白ブイを狙う。行きの航跡をだそうとしても出てこない。大網が心配だ。海はますます暗い。
宮田の大網がかなり沖に出てたのだが発見できない。とにかく前は何も見えない暗闇。うしろを振り返れと不思議と視界はいい。突然の蛸壺、すんでのところでかわす。夜に浮遊物に激突は嫌だ嫌だ。赤白に触るぐらい寄って形状確認。間違いなく赤白ブイだ。ここからまっすぐ入港灯を狙うと間違いなく網にひっかかる。一度マリンパークに寄せる。オンザロックだけは避けたいので、水深20mラインまでにする。不運なことにメーターの灯りが点かず、水深が読みにくい。適当なところで変針、入港灯を目指す。念のためデッドスロー、網のエンドを探すが、全く見えない。突然、石森が舵を切る。あと1挺身だった。ほぼ激突コース。ブイとけんかしても勝てないだろう。恐くなって大きく離す。水深には注意。15m、10m、突如2m!すんでのところで右に切る。浅い山があるは知ってたが、こわごわスローで入港灯へ。後ろを振り返ればいくつも小さな島が見えている。こんなに引いていたのか。潮のみていなかった罰だな。セールをおろし壺入港。先着ダンスに舫をとってもらい一安心。
小さな冒険航海は終わった。

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